06/10/19-06/16/19

  • 中間テストとレポートの提出期限が重なったりしたので(質問などへの対応が集中し)どことなく落ち着かない感じで一週間を終える。
  • そういえば先週言及したESRCのWriting-Up Bursaryの概略を述べると、滞在中に向こうの研究者と議論をして、学術論文を一つともう少し幅広い人も読むopinion paperを一つ書き上げる、というものなんだけど(当然ながら事前にけっこう準備していかないと終わらないと思うけれど)、まあこういう仕組みにおいてopinion paperを要求するというあたりからもacademicなwritingとは何であるべきかというものについての考えは分岐していると思ったりした。
  • 今週の作業としては、基本的には某書評論文を執筆するために以下の著作及び関連論文などを読んでいた(パラ見を含む)。

目次

  • はじめに
  • 第1章 「軍事研究」前史――ダイナマイトから七三一部隊まで
    1. 欧米の科学者たち――戦争にどう向き合ったか
    2. 日本の科学者たち――軍事研究が当たり前の時代に
  • 第2章 冷戦がすすむなかで――大学が聖域になったとき
    1. 日本学術会議の声明
    2. 中谷宇吉郎が巻き起こした論争
    3. 科学者京都会議
    4. 東京大学で軍事研究か
  • 第3章 ベトナム戦争の時代――「平和の目的に限り」の定着
    1. 米軍資金をめぐる問題
    2. 物理学会の「決議三」
    3. 「平和の目的に限り」の定着
    4. ベトナム戦争アメリカの科学者たち
  • 第4章 新冷戦の時代――「平和の目的に限り」の裏で
    1. 「軍事」の拡大
    2. 第五回科学者京都会議
    3. 宇宙の軍事利用
    4. 大学人や研究者の声明・宣言
    5. 生物戦にかかわる研究か
  • 第5章 冷戦終結後――進みゆく「デュアルユース」
    1. 宇宙の開発利用と安全保障
    2. デュアルユースを梃子に
    3. 生命科学におけるデュアルユース
    4. 神経科学におけるデュアルユース
    5. 学術界の反応
  • 第6章 軍事研究の是非を問う――何をどこまで認めるか
    1. これまでをふりかえる
    2. 軍事研究はすべて否定されるべきか
    3. 歯止めをどうかけるか
    4. 科学技術の順調な発展のために
  • おわりに

 第一次世界大戦で科学者たちは毒ガス兵器という残忍な兵器を作り出した。第二次世界大戦ではさらに強大な核兵器までも作り出してしまった。こうした事態を反省して、第一次大戦後にはバーナルらが「もしすべての科学者が反対するならば、戦争は不可能であろう」と述べ、軍事研究に手を染めないよう科学者たちに訴えた。第二次世界大戦後には日本学術会議が「戦争を目的とする科学の研究には絶対に従わない」と宣言した。科学者や技術者は、「自分たちが兵器を作り出さない」ことで科学技術の軍事利用を防ごうとしたのである。
 しかし時代が進むにつれ、「自分たちが兵器を作り出さない」にもかかわらず、科学技術の成果が駆使され兵器の高度化が進んだ。理由の一つは、科学者・技術者の層がぐっと厚くなった結果、大学の研究者を中心とする「自分たち」の歯止め効果が大きく減少したことであろう。第五回科学者京都会議のあとに田中正が指摘したように、「軍事研究開発を支える人たちは壮大なピラミッドを構成」するようになったのである。また、民生分野の研究成果がのちに軍事分野に転用されたり、あるいはデュアルユースの科学技術が用いられたりして、「自分たちが兵器を作り出さない」にもかかわらず兵器の高度化が図られるようになった。
 こうしたことのため、「自分たちが兵器を作り出さない」という対応だけでは、戦争のために科学技術が利用されることを防ぐという、本来目指していた目標を達成できなくなっているのではなかろうか。軍事研究をしないと学術界が宣言し遵守するだけでは効力に限界があると思われるのだ。そこで考えられるのが、科学技術が戦争に「利用されないようにする」、つまり利用につながる箇所にも目を配るという方法である。アメリカでバイオテロを契機に設置されたNSABBは、まさにこうした役割を担うものの一例であろう(杉山 2016: 221-222)。

※ちなみにこの本を読んで、ベトナム戦争における自然科学者の軍事協力と言えば科学史家はまずJASONを思い浮かべるということを知った。私のように先にキャメロット計画のほうを学ぶというのは、ずいぶん非標準的な順番なのだろうと思った。

  • 黒崎輝, 2008,「核兵器との共存を模索する科学者――パグウォッシュ会議における最小限抑止論の受容と米国の科学者の役割,1955-1963年」 『アメリカ研究』42: 77-97.
  • 黒崎輝,2009,「日本における核抑止論批判の誕生――パグウォッシュ会議と日本の科学者、1954-1963年」『同時代史研究』2: 3-20.
  • 兵藤友博「杉山滋郎『「軍事研究の戦後史――科学者はどう向き合ってきたか」』書評」『科学史研究』57(285): 68-69.
  • 泊次郎「書評 軍事研究問題にどう向き合うのか」『UP』46(5): 54-59.

科学者と戦争 (岩波新書)

科学者と戦争 (岩波新書)

  • 来週の作業としてはまたもや締切を突破してしまっているこの某書評論文をなんとか終わらせたい。
    • 月曜日中に再読を終わらせ、火曜日中に日本語原案を提出し、その週のなかで英語化を行うというかたちで行こう。幸い火曜日が(学内行事の都合で)休講なのは好都合である。